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ナナカマド(七竈)

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ナナカマド(七竈)

 カエデが紅葉の皇帝ならば、ナナカマドは、紅葉のプリンセスでしょう。

 ナナカマド?
 それって、どんな植物?

 という人も多いかもしれりませんが、ナナカマドほど全国各地に自生している植物はありません。とくに白根山・上高地・北海道なんかには、石を投げればナナカマドに当たるくらいナナカマドが自生しており、その美しさのために街路樹にされていることさえあります。別館ティンカーベルの庭にもナナカマドが咲いています。

 山にも多く自生しており、登山家にとってナナカマドは、故郷の木のようなもので、ナナカマドを知らない山男はモグリ扱いされます。それほど有名な木で写真の被写体になりやすい木です。

 ところで、どうして「ナナカマド」というネーミングがついたのでしょうか? 実はナナカマドの奴は、燃えないというか炭にならない木なのです。7回かまどで焼いても炭にならないので、ナナカマドと言われるようになりました。

 ちなみにバラ科の落葉高木で、高さ7〜10メートルと小さく、一回覚えれば、忘れない木です。つまり、他に類似の木がないので、ナナカマド一つ覚えておけば、ハイキングに行ったときに誰でも

「これがナナカマドだよ」

と偉そうに説明し、

「7回かまどで焼いても炭にならないので、ナナカマドと言われるようになったんだ」

と、さも博識があるように講釈すれば、連れの人間に尊敬されること間違いありません。実際、山に登ってみると、百人に一人ぐらいの確率で、そういう講釈をしている人に出会います。

 5〜7月、枝先に径約10センチの白色の花を咲かせ、秋の紅葉と赤熟した果実が美しいことで知られています。とくに若葉や紅葉が美しく、上高地の涸沢あたりでのナナカマドの紅葉は、まるで天国を思わせるほど美しく、写真家で有名な前田真三さんも、何度もナナカマドを被写体として撮影しているくらいです。それだけに、山岳写真家はナナカマドをとり続けていますし、秋山の山岳写真でもナナカマドの写ってないものは少ないくらいです。

 ちなみに北ヨーロッパでは、ナナカマドは別名『魔よけ』と言い、生命の樹として尊ばれています。ようするにヨーロッパ人の御神木なわけで、春の到来を早める力があると信じられました。花言葉は「思慮分別」「解毒力と慈悲」なので、分別の足りない毒のある人には、ナナカマドをプレゼントしてあげましょう。
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